2014年04月08日

抽象的な「民主主義のルール」を振りかざして満足する東京新聞の社説

4月6日の東京新聞の社説は「週のはじめに考える 民主主義のルールとは」というものでした。

社説では、
  「一強多弱」の政治状況です。多数決を用いれば、「一強」は何でも決められます。でも、民主主義には多数派のおごりを覆すダイナミズムもあります
と指摘し、民主主義のルールとして次の3つを挙げています。
@話し合い
A多数決
B検証


そして、
 国を動かす一つ一つの政策には、当然、政府とは異なる意見を持つ人々がいます。議論の過程で、少数意見を十分に尊重し、くみ上げることが肝心です。

 少数意見を押し切らず、交流しあうことが大切です。面倒であっても、熟した議論は避けられません。民主主義を多数決だと思い込んでいる人は、再考すべきです。
と、少数意見を尊重することの重要性を繰り返し説いています。

また、教育出版発行の教科書『現代社会』にある「全メンバーの承認に基づいて社会を結成すべきであること」と「社会の運営にあたって、個人をとことん尊重すべきであること」という民主主義の基本原理を挙げ、「民主主義とは、この二つを同時に実現しようとする企て」であると指摘した上で、安倍政権の特定秘密保護法の強行採決や集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更、安保法制懇と内閣法制局長官の人選を例に、反対意見を排除し多数で押し切ることは民主主義的ではなく「異論をはさませぬ姑息さを覚え」ると批判しています。

高校の教科書に書いてあるぐらいですから、東京新聞に心配されなくても「民主主義を多数決だと思い込んでいる」有権者はごく少数で、ほとんどの人は民主主義において少数意見の尊重が大事であることは分かっているはずです。

それは「一強」である自民党の国会議員も然りです。
もっと言えば、日本を含む先進民主主義国の国民はそのことを認識した上で民主政治の難しさやもどかしさと向き合っているのです。

したがって、あえて論ずるのであれば、“少数意見の尊重は大事だ”ではなく“どこまで尊重すべきか”という点の方でしょう。

学級会や昼食の選択とは違い、国の政治で決めなければならないことは非常に多数に及ぶため、政権を担う与党は限られた時間の中で様々な政策について適切な意志決定をし、執行するよう求められます。

時間的制約が無ければ、それこそ「全メンバーの承認」が得られるまで議論をすることも可能でしょうが、現実はそういうわけにはいきません。
まさに“少数意見の尊重”と“迅速な意志決定”とのせめぎ合いの中で国家運営をしなければならないのです。

とりわけ議院内閣制を採る日本の場合は、三権分立を謳いながらも衆議院選挙で多数を獲得した政党(=与党)によって内閣と国会(衆議院)が同時にコントロールされる仕組みになっており、与党のトップである総理大臣は行政府のみならず、事実上、立法府をも統べる権力が与えられることを意味します。

すなわち、行政府のトップが議会の決定に対して拒否権を行使することができる厳格な三権分立に基づくアメリカの大統領制よりも、多数党の意見が通りやすい制度を採用していると言えます。

よくメディアで批判される、いわゆる“強行採決”についても、その議決が有効であることから明らかなように、国会の手続の範疇で行われていることであり、違法行為ではありません。

このように日本の場合は多数意見を押し通しやすい制度になっているため、現状の決定手続に不満があるのであれば、むしろ制度を変えるよう主張した方が良いのではないでしょうか。

結局、抽象的な「民主主義のルール」をどう実際の制度に落とし込んでいくかが重要であり、現行の制度の枠内で動いているアクターに対して制度外の行動を取らせるのは容易ではありませんし、基本的にそれはアクターの裁量に任されています。

また、人によって、あるいは案件の内容や時間的制約によってどこまで少数意見を尊重し得るかは様々ですし、少数意見と一口に言っても東京新聞が想定する“左”の少数意見だけでなく、安倍政権よりさらに“右”の少数意見だってあるのです。

このように現実の政治では「民主主義のルール」をどう制度として具現化していくかという部分で葛藤や困難が生じているのであり、「話し合い」や「尊重」などと抽象的な議論に終始していては何の解決にもつながりません。

「民主主義のルール」を徹底させたいのであれば、具体的にどう制度を変えるべきかやどこまで少数意見をくみ上げるべきかというところまで踏み込んで論じるべきです。


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