2014年05月07日

ハフィントン・ポストのデータ分析がひどすぎる件

5月7日のハフィントン・ポストに「女性の年収、低すぎ?」という記事が掲載されていました。

記事では、
 国税庁が発表した「国民給与の実態調査」によれば、2012年における会社員の平均年収は408万円――。しかしこれは、男女を合わせて算出したもの。実は、男女別に計算すると男性502万円、女性268万円という、実に大きな格差が存在する。
とし、男女間の賃金格差を取り上げています。この観点は良いとして、問題はそのデータの取り方です。
 なお、データは数が年々増えている、非正規雇用も含めたものを使用した。平均給与は正規が468万円、非正規が168万円と格差があるが、こちらについてはまた別の機会に譲りたい。
この説明を読んでいただければ分かるように、なんと男女の賃金格差を調べるのに非正規雇用も含めた賃金データを使っているのです。

思わず「えっ?!」と声が出そうになりました。非正規を含めることによって同じ雇用形態での賃金格差が比べられなくなってしまうことが分からずデータを分析し、堂々と記事にしているなんて、顎が外れそうです。

こんなの中学生レベルでも分かる話ですが、常識的に考えて女性の方が非正規率が多い上に非正規の方が賃金が低いため、雇用形態を分けずに一緒くたにしてしまうと非正規率が高い女性の賃金が低く出てしまうに決まっています。

実際、厚生労働省の「平成22年就業形態の多様化に関する総合実態調査」でも、男性の場合、正社員が75.3%で非正社員が24.7%、女性の場合、正社員が41.8%で非正社員が58.1となっています。

男女間の賃金格差を言うのなら、絶対に何が何でも同じ雇用形態で比べなければ意味がありません。

また、記事では業種別に男女の平均年収を比べて「女性に厳しい業種は飲食・宿泊、製造業、小売」と結論づけていますが、これも非正規という雇用形態が多い業種の方が必然的に女性の年収が低くなっているだけです。

この点、さっぱり意味が分からないのが、記事にも「インフラ、情報通信、研究・教育は比較的割合が高く、飲食・宿泊、製造業、卸・小売が低い。非正規雇用が多い職種であることが考えられる」と書いてあるのにもかかわらず、記者がまったくデータの歪みに言及していないことです。

そもそも男女の賃金格差を見るのに国税庁の数字にのみ依拠し厚労省の統計を参照していないところが不可思議です。

厚労省には雇用均等・児童家庭局という部署があり、男女の賃金格差についてもデータを出しています。

同局が作成している「男女間の賃金格差解消のためのガイドライン」によると、平成22年の調査で一般労働者(常用労働者のうち短時間労働者を除いた労働者)の男性の平均賃金水準を100.0とすると、一般労働者の女性の平均賃金水準は69.3となっています。

ハフィントン・ポストの“データ分析”では平成24年時点で53.3%ですから、完全に非正規を含めたことによる下方の歪みが発生しています。

さらに、記事の最後ではアメリカの数字と比べているのですが、記事に貼られたアメリカ労働局のリンクを見てさらに驚愕しました。

なんと、このアメリカ労働局の統計は"full-time wage and salary workers"の男女の賃金格差について調べたものだったのです。

つまり、ハフィントン・ポストの記事では、アメリカのフルタイム労働者の男女の賃金格差と、日本のパートタイムも含めた全雇用形態の労働者の男女の賃金格差を比較しているのです。

これはニュースサイトに載せてはいけないレベルの事実誤認です。

データを扱う上での初歩の初歩も知らない記者がデータジャーナリズムを標榜しているなんて噴飯ものです。

この記事を書いた記者だけでなく、これをそのままサイト(しかもフロントページ!)に載せることに同意した編集長の見識すら疑ってしまいます。

統計リテラシーの低い読者がこれを鵜呑みして誤解しないよう、即刻、削除して分析し直すべきだと思います。


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